山田  千佳(やまだ ちか)


特定研究員

専門分野

公衆衛生

研究分野/キーワード

国際精神保健、薬物使用障害、アクセス可能な保健医療サービス、タスク・シェアリング、スティグマ、社会的包摂、集団間接触

研究概要

インドネシアにおける薬物使用障害をもつ人のための認知行動療法の開発と評価
薬物使用障害は、インドネシアを含む低中所得国で重要な健康問題となっている。しかし、低中所得国での有効な治療法についてのエビデンスは非常に少ない。このプロジェクトでは、薬物使用障害のための認知行動療法をベースにしたプログラムをインドネシア向けに改変し、開発する。そして、多施設共同・無作為化比較試験にてその効果を評価する。
 さらに、プライマリヘルスケアで提供できるように認知行動療法プログラムを修正し、プスケスマス(同国の保健センター)等においてその有効性を評価する実装研究を行う。この成果を報告することで、インドネシアやその他の低中所得国における薬物使用障害をもつ人々のための健康政策やガイドラインの策定に寄与することを目指す。

フィリピンにおける精神保健上および薬物使用の問題をもつ人々の社会的包摂とQuality of Life
低中所得国に暮らす精神保健上の問題をもつ人々は、差別を受けていることが予想されるが、それに関して報告した研究は数少ない。私たちは、2018年にフィリピンにおいて、精神保健上の問題をもつ人々が経験しているスティグマについての質的研究を行なった。その結果、フィリピンの文化、社会経済的側面に特異的な差別が起こる文脈、その影響、そして修飾する要因を明らかにした。
 また、フィリピン政府の「麻薬戦争」下において、物質使用は、世界の重要関心事となっている。次の研究として、フィリピンにおいて、薬物を使用する人々のQuality of Lifeとその関連要因を明らかにする横断研究を行なっている。これまでに、薬物を使用する人々の社会、経済、政策に関連する要因、および健康状態に関する調査を行った。その結果を、フィリピンの政策策定者にフィードバックすることで、薬物を使用する人々のQuality of Life向上に寄与することを目指している。

依存症の体験談スピーチの話し手を対象としたサポートプログラムの開発と評価
 依存症を経験した人が、その回復についてスピーチすることで、聞き手が依存症をもつ人に対してもつスティグマを低減できる可能性がある。しかし、そのようなスピーチが話し手自身にもたらす影響についてはあまり明らかにされてこなかった。私たちは、まず話し手にとってのリスクとベネフィットについて概念化し、その構造を明らかにするための質的研究を行なった。さらに、このプロジェクトでは、依存症をもつ人々が、自分の体験について一般に向けてスピーチするかどうか、またするならば、どこで、どのようにするのかについて、より良い自己決定ができるようにサポートするための教育プログラムを作成し、その評価を行っている。このプログラムにより、スピーチが引き金となって起こる悪い影響(薬物の再使用や再トラウマ化など)を最小限にすることを目指している。